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世界中のオシロメーカーのうち、ブラウン管も内製していたのは、米国Tektronix社と日本の岩崎通信機の2社でした。
1990年代後半にTektoronix社がアナログオシロ市場から撤退し、今では岩通計測1社となってしまいました。岩通計測は岩崎通信機の計測器事業部が分社して誕生した会社です。
かつてのオシロスコープは、アナログ技術の粋を集めたものでした。高速信号を管面に精細に表示するには、高性能な信号増幅回路、同期回路、掃引回路、偏向回路が必要ですが、最終的にはブラウン管が性能を決定していましたから、高性能ブラウン管を入手できるか否かが勝負を決していました。
現在、超高性能アナログ・オシロスコープを製造している世界で唯一の会社となった岩通計測を代表する製品がTS81000シリーズです。
http://www.iti.iwatsu.co.jp/ja/products/ss/ts81000/16_01.html
アナログ・オシロスコープですが、画面表示はカラー液晶(SVGA、800x600)です。本当にアナログなのか?と疑問に思われるかもしれません。
81000シリーズは岩通独自のスキャン・コンバータ管を搭載しています。これは静電偏向型ブラウン管の蛍光面の代わりにCCD撮像素子を内蔵したブラウン管です。
静電偏向型ブラウン管は偏光板に加える電圧によって電子線を偏向します。高速、高周波の信号を波形として描くには、猛烈に高速な水平偏向と、猛烈に高速な垂直偏向が求められます。そして、高速になればなるほど、偏向量は減り、蛍光面の表示は小さくなります。このため1970年代の高性能オシロスコープは奥行きの長いブラウン管を使って偏向量不足を補っていたため、必然的に高速・広帯域オシロスコープほど奥行きが長かったものです。
スキャン・コンバータ管だと、管内での偏向量はわずかですが、CCD撮像素子も小さいため、撮像素子の分解能さえ十分にあれば、表示デバイスに波形を大きく描くことが可能になります。
こうして帯域1GHzのアナログ・オシロスコープを実現しています。
そういうわけでアナログオシロの最高峰は、岩通なのです。日本を代表するオシロスコープ・メーカーだと思います。
ところで、岩通のオシロスコープはSS-xxxxという型名です。これはSynchro Scopeの頭文字をとったもので、「シンクロスコープ」はトリガ掃引式オシロスコープの代名詞でした。
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