■ARR-1 アドバンスト・レギュレータ・レクチファイヤ


本機の外観(製作途上でのスナップなので完成品と少し異なります)
 インスタント・レタリングの剥離防止用にクリア・ラッカーを吹き付けたら下地の黒ラッカーが溶けて文字がにじんでしまった(u.u) レトラコートを吹き付けてからクリア・ラッカーを吹き付けるか,最初にクリア・ラッカーを薄目に吹いて,それが完全に乾燥してからクリア・ラッカーを吹き付ければこんなことにはなりません.

●概要
 低損失レギュレータと低損失レクチファイヤを内蔵しています.レギュレータの制御電圧は外部から可変できます.
 純正レギュレータとほぼ同じ外形サイズで同じねじ位置にしたので,ボルトオン&カプラオンで交換できます.
 損失は純正レギュレータの半分以下となり,アイドリング状態でもバッテリを充電可能です.

●同機
 きっかけは走行中のバッテリ上がりでした.5年目を迎えたバッテリはサルフェーション気味で電気容量が減っており,夕闇迫る道路で信号待ちでエンストしたらセル・モータが回りませんでした.安全運転のため昼間のヘッドライト常時点灯走行をすると,バッテリが充電されにくいせいか,夕方には電気量が底をついてしまうのです.そんなことが2〜3度あって,電装系の低消費電力化のため,手始めにポジション・ランプとメーター照明のLED化をしてみました.そして新型のMFバッテリーを購入する一方で,サルフェーションを除去するパルス・チャージャBC-5Aを製作しました.
 しかし,これらのLED化程度では目立った改善は見られません.消費電力を減らすだけでなく,基本的に発電量の増加を図る必要があります.そこでパワーMOSFETの同期整流による無損失レクチファイヤを検討しました.しかし,負荷が12Vバッテリの場合,パソコンのマザーボードのような低電圧で起電力をもたない負荷と違って制御回路が非常に複雑になってしまい,純正レギュレータの形状に納めることは困難と考えられました.そこでパワー・ショットキー・ダイオードによる低損失レクチファイヤで我慢することにしましたが,それでも電圧降下は半分になり,ヘッドライトを消灯していればアイドリング状態から充電可能になりました.
 また,どうせ苦労して自作するのですから,オマケ機能として設定電圧のディジタル化や電気式タコメータ用の信号,フィールド・コイルの通電状態表示機能などを盛り込むことにしました.
 レギュレート・レクチファイヤはバッテリー点火のバイクが走行するための心臓部です.もし故障したらレッカーのお世話になりかねません.そこで,現在の電圧を常時モニタできるようディジタル電圧計,フィールド・コイル状態を表示するスイッチ・ボックスSB-8を増設することにしました.

●低損失レギュレータ
 純正レギュレータは3Wほどの電力損失がありますが,本機のレギュレータ部の損失は0.3W以下です.純正レギュレータの効率が悪い原因は制御出力のパワー・トランジスタがダーリントン接続になっていることにあります.このためコレクタ-エミッタ間電圧がBECE(sat)より下がらないのです.
 本機は低オン抵抗のパワーMOSFETとヒステリシス・コンパレータの組み合わせにより,スイッチング過程の損失も軽減しています.
 純正品は新電元工業製でした.ヒステリシスがほとんどないので,制御電圧出力にLEDを接続してエンジンをかけた状態で目視観測すると,すばやくON/OFFを繰り返しているのでONなのかOFFなのか特定できません.このすばやいON/OFFは実用上はあまり問題がないのですが,低速でON/OFFを繰り返すと出力電圧が飽和していない遷移区間は熱損失になります.また,私はその状態をSB-8のモニタLEDで目視したいという要望がありました.
 ところで,サービス・マニュアルには記載されていませんが,純正レギュレータ(新電元工業のSH-236A-12 2.2)は電気式タコメータにも対応できるようにするためか,デューティ5%ぐらいで必ずプラス極性のパルスが出力されるようになっています.このため最大通電時でもデューティは95%ぐらいまでしか上がりません.制御電圧以下の場合でもフィールド・コイルは100%通電にはならないのです.CB750Fのタコメータは,FZからFCまで一貫して機械式なので,このパルスは利用されていません.
 そこで本機では,純正レギュレータの隠し機能(?)と思われる電気式タコメータ用パルスをフィールド・コイル出力とは別に生成しました.これで100%通電が可能です.
 本機は,制御電圧に100mVぐらいのヒステリシスを設けたので,発電電圧が制御電圧を超えたときのフィールド・コイル制御出力は,数Hz程度でON/OFFを繰り返すのでLEDによって目視可能です.これはSB-8のフィールド・コイル・モニタ表示とも相性が良く,発電電圧が制御電圧を超えると,モニタLEDが赤から緑へ切り替わりピカピカと点滅を繰り返します.


SB-8のフィールド・コイル表示モニタLEDが点滅するようすの動画(約3.8Mバイト)
(設定電圧14.5Vでエンジンをアイドルから3000rpm付近まで回している)


SB-8のフィールド・コイル表示モニタLEDが点滅するようすの動画(約3.8Mバイト)
(設定電圧15.0Vでエンジンをアイドルから3000rpm付近まで回している)

 レギュレータの制御電圧は,本機の外部設定コネクタに何も接続しない場合は14.5Vになります.外部にスイッチ・ボックスSB-9を接続すると,サムホイール・スイッチによって14.5Vから15.5Vまでの間を0.25Vステップで設定することができます.

●低損失レクチファイヤ
 50V耐圧のパワー・ショットキー・バリア・ダイオード6個による3相全波整流です.純正は1.94V@18A(1相あたり1.94V@6A)近いロスがありますが,ARR-1のロスは0.92V@18A(1相あたり0.92V@6A)です.日本インターのTO-220パッケージ品であるC10P05Q(50V,10A)を使いました.  レクチファイヤの3相入力は純正と同じ0.75sq(0.75mm2)のビニル線,整流出力も純正と同じ2.0sqのビニル線を使いました.
 日本電装の特許による中性点回生を適用すれば高速域で10%ほどの出力向上を期待できるらしいのですが,ステータ・コイルから中性点を引き出す必要があるので,本機では見送りました.


製作中の本機内部
 このケースに決めるまでに4週間ぐらい検討しました.結局,既製品になかったので、さらに数週間かけて材料探しをして,防水構造と放熱構造を検討して製作するのにさらに33週間ぐらいかかっています.材料は厚さ1cmぐらいのアルミ製ヒートシンク(中古100円)とコの字形のアルミ・アングル(300円),φ10のアルミ・パイプ(100円ショップで100円)です.材料代は安いのですが時間と労力がかかっています(^^; しかし,そのおかげで純正レギュレータ・レクチファイヤと同じねじ位置で同じサイズ以下なので,そのまま置き換え可能です.

●回路図



●成果
 ヘッドライトOFFならアイドリングしていると徐々にではありますが,バッテリ電圧が上昇していくのがわかります.やったー!という感動の瞬間でした.
 翌週,少し冷静になってあれこれ測定してみました.ただし,エンジンをかけた直後なので,バッテリ電圧が低下していますからバッテリへの充電電流が流れ気味かつ変化している状態です.
 アイドリングは1000rpmと少し高めの状態にて,ヘッドライトOFFなら1Aぐらいの充電状態ですが,ヘッドライトONだと,さすがに放電状態です.では夜間を想定して,ALSを使ってヘッドライトがOFFの状態だと,充放電が均衡している感じです.メーター照明をLED化すれば充電状態にもちこめるかもしれません.
 まだ完成して間もないので,続報をお待ちください.




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