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AirTagの正体とGPSトラッカー実現の仕組み
 marry  - 25/10/15(水) 20:52 -
●AirTagの正体はBluetooth Beacon
 2010年にBluetooth V.4.0が発表され,その特長の一つとしてBluetooth Low Energy(BLE)なる超低消費電力の無線テクノロジーがあり,BLEを活かした用途がBeaconでした.たとえば紙のポスターが壁に貼られていて,そこに小さくて薄型のBeaconタグが付いています.Beacon対応の携帯電話をもった歩行者がポスターに携帯電話をかざすと,詳しいイベント情報やらチケット販売情報やらのウェブサイトにアクセスして利便を図るようなデジタル・サイネージ(電子広告)としての利用を想定していました.発表から1年ぐらいすると,無償でビーコン・タグを配布するプロモーションが行われ,ちょっとした開発ブームが起こりました.
 しかし,ブームは一過性で終わり,Bluetooth Beaconはいつのまにか忘れ去られ,時代が産んだ徒花と消えたのでした.
 じつは2009年にBluetooth 4.0の登場前後にApple社がBluetooth SIGに加盟しています.
 そして約10年が経過した2021年4月にAppleのAirTagが登場します.もはや忘れ去られたかに思えたBeaconが,こっそりと復活し,FindMyなる「探す」アプリによって実用性の極めて高い魅力的なシステムの末端を担うキーデバイスになったのでした.

●FindMyサービスによるGPSトラッカーの仕組み
 FindMyはApple社が提供する「探す」サービスです.もともとiPhoneやiPadやMacBookなど,Apple社のデバイスを紛失したときに,その位置を持ち主に知らせて探すサービスでした.そこにAirTagが加わりました.
 AirTagは,2.4GHz帯のBluetoothタグです.タグ周囲の半径10〜数十m程度にあるApple社のデバイス(たとえばiPhone)と勝手にペアリングして小さなパケット(データ)を送受信します.Apple社のデバイスがインターネット接続されていることが前提です.パケットにはタグのMACアドレスとApple社のデバイスが取得したGPS座標情報が含まれており,それらは暗号化して送信され,インターネット上のApple社のサーバーに蓄積されます.
 AirTagの無線パケットを中継するのは基本的には通電されたApple社のデバイスですが,iPhone13以降は電源OFFでもM1プロセッサの一部が動作しており,AirTagとペアリングして無線パケットをインターネットへ中継します.自分のiPhoneがどこかの誰かの無線パケットを勝手に中継するのは心外だと感じるかもしれませんが,パケットは暗号化されており,Apple社は法的に問題ないとしています.
 こうしてAirTag自身はGPS受信機能もインターネット接続もないのに,インターネット上のApple社サーバーに自分のGPS座標を送信できるわけです.AirTag自身はBLEの超低消費電力な無線通信テクノロジーで動作するだけなので,たった1個のコイン電池CR2032で1年間も動作しつづけるのです.
 実に巧妙に考え抜かれたシステムだと感心します.(^^)
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